劇場版テルマエ・ロマエ
劇場版テルマエ・ロマエを観ました。コミックビーム連載のビーム史上トップの大ヒット作品テルマエ・ロマエ(THERMAE ROMAE)の映画化です。
原作は古代ローマ時代の風俗の豆知識を披露しながらすすめられるコメディ仕立てのSF風呂マンガ、それをうまく映画化してます。特に前半は原作にほぼ近いストーリー展開で、後半から映画にだけでてくるデビューを目指す漫画家のタマゴ真美(上戸彩)が絡んで原作とは違うストーリーになっていきます。
一般的には映画ってそれなりの製作費があるので、マンガ原作より緻密で時代考証もきっちりなされるものです。しかし、本作に限ってはむしろ映画の方がゆるい。とてつもなくゆるいです。別にケチっているわけではなく、ちゃんとかけるべきところには予算を使っているのですが、要らないところには徹底的に安く上げる「ゆるぎなきユルさ(ちょっと自己矛盾)」が画面に満ち溢れています。そしてそのゆるさがいい感じにギャグになっています。
原作はそれなりに時代考証に気を使った作品でそれが面白さのコアとなっていますが、映画版はストレートに和風で古代ローマにはありえないデタラメだらけ。なぜなら原作同等の考証レベルを目指して原作と同レベルの小道具・大道具を用意していたら、いくらお金があっても足りないからでしょう。ここは割切りが肝心。
少なくともヴェスヴッイオ火山の壁画はモザイク壁画にしたいのでしょうが、そこはぐっと我慢です。この手の時代劇映画は馬がたくさん出して豪華さを演出するもの、戦闘シーンも馬車とか騎兵とかがんがん出したいところでしょうが、本作でお出ましになるのはロバ一頭だけ。おかげで皇帝自ら乗り出した親征だというのにあまりにしょぼい、フラッシュアニメ版を上回るユルーい剣劇シーンになってしまいましたが、そこもぐっと我慢です。
キリストのキも知らないルシウスが何気なく西暦を使っていても(当時はキリスト教徒ですらキリスト歴は使ってなかったと思う)それだってぐっと我慢。皇帝の手紙のラテン文が当時ありえない中世教会ラテン語だとしても、とにかくぐっと我慢(そもそも当時のラテン文は空白で単語を分かち書きする風習すらなかった)。
この我慢の積み重ねのユルさが笑いを産むのです。クライマックスの温泉施設が文字通りの掘立て柱を使った掘立小屋なのもご愛嬌。ローマ人なら石積みで作れよとか言わない。それでこそ、阿部寛の裸一貫の怪演技が生きてくるというものです。
鑑賞特典オマケの小冊子に書き下ろし漫画が載っててちょっと得した気分になれます。漫画誌ってこの手の小冊子特典がホント好きだよね。
日本映画の中で特筆すべきユルさと豪華さを兼ね備えたコメディ作品。意外と上戸彩が巨乳なのも再確認できます。入浴シーンもあるよ!