Arc アークを観ました。今をときめくSF作家Ken Liuの短編の映画化です。しかし日本の映画市場ではSFだということは極力隠蔽された宣伝しかできないのです。
原作は短編なのでストーリーとしては単純。老化を克服して永遠に生きられるようになった世界の変わっていく様を描写した話です。
主役の芳根京子、世界で一番最初に老いを克服した女性を演じます。若い肉体に老いた魂が宿ってる演技にはすごい説得力があると思いました。芳根は童顔なのに普段から立ち居振る舞いが老成してるんだよね。逆に10代の頃のダンスシーンはマジでわけわからん。寺島しのぶ演じるエマはあのクラブに何しに行っていたのか? 女あさり(エマは同性愛者って設定)? 説明されない裏設定が山ほどありそうな作品です。
不老が実現できても、それには大金が必要で、250年ローンとか抱えて不老処置を得る社会。不老効果を得るには定期的になんか注射を打たなきゃいけないから、借金から逃げてバックレても不老効果はなくなってしまう。ある意味でディストピアですね。
一番変わるのは生命保険なんだろうな。老いは克服しても病気や怪我で死ぬことはあるので、生命保険はもっと重要になりそう。特に250年ローンを抱えた人が病気や怪我で死んだらローン会社は大損だから、団体信用生命保険(団信)が売れまくりそう。
著作権は作者が生きてる限り永遠に有効なので、価値が高い著作物の作者は殺すインセンティブが高まって危険そう。殺されるリスク回避のため著作権を自己の意志でパブリックドメイン化とかしそうだ。
死体のエンバーミング施設とか高度な医療研究所が都会の高層ビルにあるって設定が中国っぽい気がする。日本ならその手の施設は富士五湖の近くの富士山がよく見える森のそばの広大な敷地にあるイメージですね。死を待つ老人の介護施設が本土からすぐ近くの離島にあるって設定はいかにも日本なんだけどなぁ。
自分の子供より親が若い肉体・容貌ってのは、∀ガンダムのムーンレースにもあったようにSFではありきたりの表現で、ヒント出し過ぎなのでオチもSF者ならすぐに見抜けそう。
SF実写は売れないという日本映画のジンクスは覆されることはない気はしますが、なかなか面白い作品です。昭和は「復活の日」とか売れたのになぁ…