空飛ぶタイヤ
空飛ぶタイヤを観ました。三菱自動車をモデルとした池井戸潤の企業小説の映画化です。もちろん三菱の名前は直接は出てきませんが三菱そのものです。
同作者の半沢直樹シリーズとは違ってリアルな描写ではっきり言って爽快感はないです。何も罪のない人が死んでるわけですから「三倍返しだッ」で済むわけはなく、たいへん後味が悪いストーリーです。
予告編でディーンフジオカが「リコール隠しではないか」と吠えてますが、彼がやってる役は善玉ではないのです。むしろほぼ悪役に近いところ。彼は被害者のことを思ってリコール隠しに怒りを感じているわけではなく、数年前にリコール隠しがばれて売上低迷している状態でまたリコール隠しが明らかになったら会社が潰れると言ってるだけなのです。
欠陥を隠せと指示していた悪い役員は最後にはディーンフジオカのリーク情報で失脚しますが、それは正義の心というよりは待遇が気に食わなかったからというのが大きく、もし彼が待遇に満足していたなら悪事が露見することはなかったと思われます。まさにガンダム0083のシーマ様的ダークヒーローです「故あれば私は寝返るのさ」シーマ様は死んじゃうけど、ディーンフジオカはのうのうと生き残るのです。
中小企業の運送会社も疑いが晴れたからと言って楽になるわけでもなく被害者が生き返るわけでもなく自己の時のドライバーの心の傷も言えるわけでもなく、非常に後味が悪い中にサザンが歌う主題歌が流れるというキビシさに耐えられるか修行のような映画です。
三菱グループのクレーム対応と言えば元ニコンの川田茂雄氏の著作「社長を出せ」が有名です。本の記述によると、当時の三菱グループのクレーム対応の最優先事項は社長とか本部長とかライン上の雲の上の人を顧客から守る、少なくとも絶対に会わせないというもの。だからこそ一番困るのが「社長を出せ」と要求する客であり本のタイトルになるわけです。
普通の民間会社では偉い人って対外的に謝罪することも仕事のうちなんですけどねぇ。
そういう点で三菱カルチャーが学べるドキュメンタリー的作品です。
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