インターステラーを観ました。タイトルの最後は ー と伸ばすのが正しいらしい。みんな「インターステラ」って止めて読んでる気がするけどね。NHKの雑誌も「ステラ」。
SF映画です。宣伝もSFであることを全面に押し出していて(日本の映画界ではめずらしい)久々のSF大作と言えるでしょう。
ただ、SFとしてはあまり出来はよくないです。ストーリーは使い古された陳腐なものだし、交渉も甘いというか穴があります。でも使い古されたコンテンツを今風の演出でリブートするのが得意なノーラン監督の手腕で見ごたえのあるものに仕上がっています。
本作には複数のテーマが詰まっていますが、一番重要なのは「大衆への嘘・情報操作」でしょう。本作は権力が民衆に対して沢山嘘をつきます。
まずは(1)過去の宇宙開発は実は嘘でアポロ計画はソ連の財政をパンクさせる目的のフェイクだという、よくあるアポロ計画虚偽論を政府が子供に事実だとして教育している世界観です。理由は最優先事項である農業に大衆の目を向けさせるため。宇宙旅行なんてものにあこがれを持たせないためと説明されます。
第二の嘘は(2)宇宙開発なんて虚偽だといいながら実はNASAがこっそり復活して地球外別星系に人類を避難させる計画を立案実行中である。これが本作の柱の設定、SFネタとしては昔から使い古された設定です。
さらに、(3)PlanA現存の人類を移住させる計画とPlanB新世界に300人の人間を人工的出産(生産?)する機械を運び、人類の種と文化だけを新世界に継承させるの2本立ての計画だったのだが実はPlanAは最初から可能性ゼロの嘘だった
なんて衝撃の嘘がでてきます。
まぁ、この後いろいろあって重力方程式を解くことに成功しPlanAが実現可能となってめでたしめでたし! って感じで結末を迎えるのですが、ここに至ってもまだまだ観客に明示してない嘘がいくつか残っているとしか思えません。
たとえば、そもそもの話の発端「地球から逃れて移住しないと人類が滅亡する」これ嘘ですよね。たしかに作物が疫病にやられて食糧不足になるというのはリアリティがあります。耕作地面積にくらべて人口が多すぎて遺伝子操作した収穫量の多い作物ばかりを連作していればいつか破綻するのは納得できます。でもね。どんどん植物が死滅していき、世界が砂漠化して、光合成がとまり酸素が無くなって早晩窒息死してしまうって説はいくらなんでもトンデモ過ぎです。
まず地球全体が砂漠化なんかしないということ。海が出来た以降の地球で地上がすべて砂漠なんて時代はありません。気候変動で昔の温帯が今砂漠になったら、昔の砂漠だったところは熱帯雨林になるはず。ツンドラ地帯は温帯になって穀倉地帯になるはず。シベリアに麦植えろ!水田作れ!!
それに地球の光合成って海中・水中で行われている量が支配的で地上の光合成なんて大した量じゃないんです。たまたま地上の植物が人間にとって利用しやすいだけで、光合成は主に海で行われている。そうでなかったら絶海の孤島とか酸素不足で住めないはずだよね。実際は海洋半球である南半球の方がCO2濃度が少ないしO2濃度は高い。海洋の光合成のおかげです。
つまり、人類が滅亡なんて嘘っぱちなんです。ではなんでそんな嘘までついて人類移住計画を急いで進めていたのか? 絶滅まではいかなくても、人口を維持するのは困難でこのまま放置すると食料や資源を巡った奪い合い・戦争が起きることが確実だったからだと予測します。それを回避するためまとまった量の人口を地球外に移住させる必要があったのです。つまりこれは「棄民政策」そのものです。戦前日本で中南米や満州やハワイに入植振興したのと同じ人減らし政策なのです。
捨てた後はどうなってもいい。地球から追い出すことが目的なのだから、先ほどのPlanAの地球外移住計画もそれらしい船にそれらしい人工冬眠装置もどきを載せて、目が覚めた時は新世界だと信じ込ませた犠牲者を乗り込ませてブラックホールにでも捨てるつもりだったのでしょう。
そこまで考察すると、重力方程式を解いた後に建造したスペースコロニー型移住船も嘘だと疑わざるを得ません。重力が制御できたって空間を超越できたって、それとテラフォーミング技術は何の関係もないものね。そもそも見知らぬ惑星をテラフォーミングできる技術があったら、土地勘がある地球の環境を昔のように復旧する方が簡単なはず。地球再生すらできない人類が異星系でテラフォーミングなんて夢物語過ぎる!
アメリアのたどり着いて星だって住めるようにはならないのかも知れません。
ところでアメリアという名前、アメリカ人なら冒険家のアメリア=イヤハートからきてるってすぐわかる有名な女性で初めて単独大西洋横断を果たした女性の名前です。リンドバーグより人気が高いかも知れません。でも彼女は冒険飛行中に燃料切れになって行方不明になったままなんです。本作のアメリアもそうならないといいですね。
いろいろネタばらしというか柳田理科男的ムダ考察をしましたが、映画作品として本作はよくできてます。興行的にも成功してるようです。
尺が長いですがそれを気にさせない勢いがあります。ただしSF考証的にはアラというかわざと綻びを残してある感が強いです。
久々にSFを全面に押してきた映画。SFの灯を絶やさぬためにも大勢にみてほしいものです。