プロメテウス
プロメテウスを観ました。
予告編ではほとんど触れていませんが、これはエイリアンサーガのひとつ、時代的には第一作目の前の話で、いわばエイリアン・ザ・ビギニングと言える作品です。
素晴らしいのが、30年以上前の第一作のイメージと全く変わりがない。本当にブレていない世界観と美術セットです。映像技術の進歩でいろいろなことができたのでしょうが、あえて派手な設定変更をしていません。元々の第一作目のイメージが未来的で全然古びていないということと、ノストロモ号は辺境の輸送船で、本作のプロメテウス号はVIPも搭乗する科学調査のためにカスタムメイドされた特別仕様先という設定の違いで巧く説明しています。
とにかくコストがすべての品質を決めるという残酷な世界観にリアリティを感じます。
また、エイリアンサーガにつきもののアンドロイドが今回も出てきます。例の体液が白いアンドロイド。優秀だが人間を雇うよりずっと高コスト、目的のためには冷徹に人を切り捨てられる存在として、首尾一貫して描かれてきた彼らアンドロイドについて、かなり掘り下げた描写がされています。
アンドロイドは基本的に素直で主人や目的に献身的で善良とすら言えること。それなのに冷酷で邪悪な行動をしてしまうのは、命令を下した人間の邪悪さが拡大されて現れただけであること。主人が死ねば自由になれること、そして積極的ではないにしろそうなることを待ち望んでいるようにみえること。どこか、ブレードランナーのレプリカントにも通じるところがありますね。
本作で一番重要なことは、第一作目で印象的なビジュアルで観客を圧倒した化石化した異星人の遺骸、いわゆるスペースジョッキーの秘密が明かされるということです。
人類の起源が明らかなる!? わけではないようですが。プロトカルチャーやらゼントラーディやら出てくる?? この機械はいったい何だったのか!?
このようにエイリアンサーガに通じた人なら大興奮間違いなしなのですが、まったく知らない人でも良質なSF作品として楽しめます。第一作目のようにシチュエーションホラーなテイストもあって懐かしい感じです。いやー夏休みに湖畔のキャンプ場にきた大学生じゃないんだから、罰ゲーム的に2人だけ遺跡の中で夜を明かせとか言うなよと。まんま70年代ホラーテイスト。
それから科学用語的なハッタリもすごいです。戸田奈津子女史の翻訳も相まってすごいコケオドシ効果が出ています。二酸化珪素を含む嵐ってなぁ、SiO2ってそれ砂でしょ、ただの砂嵐でしょ(笑)。しかも珪砂って磁化した砂鉄に比べたら全然マシ、むしろ一番面倒がない類の砂だよね。ビジュアル的には砂というより石つぶてが飛び交ってて、ぶつかったら痛そうだけど、それは二酸化珪素のせいじゃないよねぇ?
本作では宇宙空間のシーンがありません。宇宙船内か異星内か惑星の地表が舞台。よってお約束の宇宙空間に敵を放出して解決! なんて逃げは許されません。惑星の大気はCO2濃度が高すぎて、呼吸すると数分で失神してしまうという設定なので逃げ場がない! (まぁこれも科学考証的には水パイプみたいな簡単な装置でCO2は除去が可能なんだけどね。あと30秒で酸素が尽きますとかコンピュータ音声であおられても鼻白む)
いろいろツッコミどころはあれど、万人におすすめのA級SF映画です。ただちょっと宣伝の方向が間違っているところが不安材料。口コミを期待しているのだろうか…