グラン・トリノ
グラン・トリノを観ました。
クリント=イーストウッドの監督作にして最後の主演出演作(と本人は言っている)です。
タイトルのグラン・トリノは今から37年前の1972年に発表されたフォード社のスポーツカーのモデル名。
主人公が勤めていた工場で作られ、主人公が大事に動態保存しているビンテージカーのことです。
このクルマが発端でいろいろな事件が起こります。
本作は老人向け映画なのですが若者が観てもいろいろ考えさせられる深い作品です。
古き良き強かったアメリカの時代へのノスタルジーや、アメリカで生きていく少数民族の想い、そしてブルーカラー労働者の矜持など、いろいろな要素が詰め込まれています。
サイゴン政府に加担したため米国に移民してきたモン族は当然として、主人公のウォルト=コワルスキもポーランド移民といういわゆる少数民族であり、宗教的にもカトリックはアメリカ社会ではメインストリームではないわけで、雑多なアメリカを象徴するような構成となっています。
モン族の少女スーと少年タオの役者がめちゃくちゃ巧いです。演技が巧いのにアジア系の顔のためハリウッドではなかなか役が取れない層からちゃんと引き上げてくるあたり、イーストウッドのプロデューサとしても顔もうかがえます。
ドラマとしては地球の危機とか世界の破滅とか、そんな大層なものは出なく、だんだん少数民族の居住区に変わりつつある古い住宅地が舞台の、ありがちといえばありがちのトラブルという映画のネタとしては小さいストーリーなのに、深いドラマです。
日本的感覚で言えば、死に場所を探す年老いた侍の物語なのかもしれません。