でかいの日記帳

2009/4/17 Friday

ウォッチメン

Filed under: - dekaino @ 7:00 このエントリをはてなブックマークに追加 <海里呂討Bookmark被リンク数

ウォッチメン
ウォッチメンを観ました。アメコミヒーローの映画です。正確には原作のウォッチメンはカートゥーンではなくて大人向けのグラフィックノベルに分類されるそうですが、とにかくDCコミック作品です。
…カートゥーンとグラフィックノベルの違いは、児童小説とライトノベルの違いみたいなものなんだろうか?

かなり過激なヒーロー集団の話です。ものすごく悪趣味というか露悪的ですが、SFとしては結構いい出来なのかもしれない。舞台は仮想戦記もののような過去のパラレルワールド、1985年が基本軸で、そこから過去をふりかえる演出で1940年以降の話がコマ切れに出てきます。

とにかくタブーをすべて無視した独りよがりな中二病的設定がスゴい。
本作でのヒーローとは、自らが信じる正義を為すために覆面をかぶって実力行使する徒党とされていて、法律で活動が禁止されている非合法集団。基本的にKKK団とかネオナチスと変わらない不逞のやからです。(あのナチスだって合法だったんだぜ)
政治的正しさなんか一笑にふす勢いで、ヒーロー達はすべてアメリカ人で白人で愛国心にあふれています。ヒーロー活動も車に轢かれかけた少女を間一髪で救うみたいなぬるいものではありません。世界の敵、アメリカの敵に敢然と立ち向かうべく、ベトナム戦争だってキューバ危機だってがんがん介入します。ベトナムでスーパーパワーを駆使してベトコンどもを焼き尽くすヒーロー達のシーンは衝撃です。

なぜか(当然?)アメリカ以外にはヒーローはいないのでアメリカ独り勝ちの歴史がつづられます。
ベトナム戦争は早期にサイゴン政府が勝利し、アフガニスタンはアメリカが支配しています。この世界では革命の輸出は非常に限定されたものになっているらしく、本編には出てきませんが中国もおそらく国民党政府が本土を支配していると思われます。

しかし、いいことばかりではなく、アメリカ国内はニクソンが失脚せず三選しており、市民がお互いに監視しあう状況、まさにオーソン=ウェルズの1984年そのままのビッグブラザーが君臨する世界となっています。
アポロ11号が月面着陸するときも、ヒーローのひとりDr.マンハッタンが先回りして監視していたり、歴史上重大イベントの影にはすべてヒーローありなのです。

そしてパラレルワールドの歴史のifの歪みぐあいが仮想戦記SF的に大変面白い。
どうやら本作のアメリカは1985年になっても大陸弾道弾を持っていないが、ソ連は大量の核弾頭つき大陸弾道ロケットを保有しているらしいのです。アメリカがソ連を大攻撃をしかけるときに爆撃機で一挙に核をお落とそうとするシーンからうかがえまます。ということはソ連もサイロから発射する弾道弾は持っていても、核ミサイルを搭載した原潜はもっていないということか?

はっきりと明示はされませんがアポロ11号の乗員はスラブ語圏の名前だったりして、実はアポロ計画を実行したのはソ連なんじゃないかという暗示があるのです。ここがSF的に面白い。
確かにヒーロー達という絶対的軍事力により優勢に立ったアメリカなら、ソ連の宇宙開発競争に大金費やしてつきあう必要はないわけで、そうするとアメリカは弾道弾を開発しないし、世界初の月旅行はソ連が実現するという流れも納得なのです。そして原潜が核ミサイルを持つというアイデアはどこの国も実現していない。現実のリアル世界よりかなり軍事緊張力が少ない、核の傘が確立していない世界ということです。
ありがちな無茶設定で破綻してしまった仮想歴史モノは多いのですが、ウォッチメンは妙に裏設定がキッチリしていてSF者としてカナリ萌える作品と言えます。

ヒーロー達のキャラもかなり立っています。
一番強いのはおそらくDr.マンハッタン。放射線事故で体が真っ青になってしまった超人(どこかで聞いた設定?)。念動力、過去透視、未来予知、瞬間移動などとにかく万能に近い能力を持ち、ただ過去は人間だったと言うだけの別種の存在で、もはや人間性すら失っている存在。スタートレックTNGに出てくるQ連続体よりも強力かつ人間離れしており、話そのものをぶち壊しにするほどのパワーがあります。
こんなに強いのにフルチンというのが笑えます。フルチン全裸のブルーマン。成人の男性器を正々堂々とCGにしてしまった一点だけでも本作の突き抜け度がわかろうというものです。

そしておそらく人気が一番高いであろうロールシャッハ。ロールシャッハ試験に使うような墨の流し絵模様が常に変動する柄のマスクをかぶった変人ヒーロー。身体能力は並みのヒーローですが探偵能力はかなり高い。暗闇のスキャナーが元ネタでしょうか?
他にも金持ちの一人息子が遺産でスーパーハイテクメンつくりまくったバットマンもどきとか、天才実業家のヒーローとか、どこかで聞いたような設定なのに、キャラ立ちまくりです。
天才実業家はデスノートのキラっぽい世直し思想にかぶれたヒーローですが、頭のよさも実行力もキラの比ではありません。

エロ・グロ表現もタブーを無視してバリバリ出てきます。とにかくデーモーニッシュな悪趣味演出のあらし。
1985年当時のか音楽や風俗の表現もまた楽しい。昔のMacとか懐かしすぎる!
好き嫌いが分かれると思いますが、他には絶対ない無茶苦茶クォリティが高い作品です。

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