動物農場
動物農場を観ました。
ジョージ=オーウェルの同名小説をアニメ化した作品です。製作は1954年、イギリスです。基本的に原作に忠実ですがラストだけ変わってます。
一言でいえば、反共・反ソ連のプロパガンダアニメ映画です。動物達がComrades(同志!)と呼びかけたり、労働歌うたったり、誤解しようもなく当時のソ連を戯画化した世界観です。また、労働者が支配者に搾取される状況に反抗するプロレタリアート文学的要素もあります。
スタジオジブリの企画により2008年末から2009年年始にかけて東京と大阪で上映されていますが、反共映画のためでしょうか、日本の従来左翼層の反応は薄いようです。
アニメーションとしてのクオリティはかなり高く、動物の擬人化アニメとしては高水準と言っていいでしょう。
特に農耕馬のBOXERというキャラがひときわすごい。
学はないが肉体労働ならバッチリと、絵に描いたような搾取されまくりの労働者の代表。風車小屋建設に多大な貢献をしたのに怪我で働けなくなると、即座に豚たちが飲む酒と引換えに糊屋に売られて屠殺されてしまうという悲劇の馬です。
悲劇キャラは馬ばかりではありません。支配者層の豚のトロツキーっぽい役柄のSNOWBALLも悲劇キャラ。同じ支配者層の豚でスターリンっぽいNAPOLEONに粛清されてしまいます。
動物達が暴動を起こして人間の農場主を追い出し革命を成功させると、鳩たちが革命を各地に飛び火させようとプロパガンダするあたりが、当時の西側が持っていた共産圏拡大への懸念がうかがえます。
本作では、幸福だった家畜たちはそんな言葉には耳を貸さず過酷な扱いを受けていた家畜達だけが話に乗って革命をおこすのですが、これも共産革命をおこした発展途上国について当時の西側はそう思っていた/市民にそう思わせたかったということなのでしょう。
建前だけ国民平等を掲げているのに実情は支配者層と労働者層が明確に分離しているあたり、反ソだけではなく反フランスの要素もあるように思えます。イギリス人はフランスが嫌いだし。
それから、共産圏と貿易をして利益を上げる商人は共産国よりももっと悪い存在だ! みたいな表現もありました。これは具体的にどこを指していたのか、中南米や中東/中央アジアなんでしょうか?
あえて難点を言えば、前半ではコミカルな振舞いでギャグ担当だったアヒルのひなが、後半シリアスな話になるとまったく出てこなくなり、投げっぱなし状態なのが気になりました。だいぶ目立つキャラだったのでシリアスな場面でも効果的に使えそうなのにもったいないです。
宮崎駿は本作について「今、豚は太っていない」というコピーをつけています。
駿本人は自分はBOXERのような存在だと思っているんだろうけど、下で働く人たちは彼のこともNAPOLEONのような豚だと思ってそうで、少し滑稽です。