空飛ぶゆうれい船
NHK-BSの石森章太郎特集で空飛ぶゆうれい船を観ました。
1969年に東映動画が製作した劇場用中編(60分)です。原作は石森章太郎ですが、キャラクターデザインは石森調からだいぶはずれている感じ。
まずテレビで放送されることはありえないレアな作品です(DVDが2003年に出ています)。特に民放では話題に上がることもないでしょう。なんたって CMスポンサーが悪の親玉ってストーリーですから。
テレビ番組は必ずいい所でCMが入るとか、番組はCMスポンサーのために作られているもので視聴者のためではないとか主人公に言わせて、かなりストレートにテレビ放送のネガティブキャンペーンやっています。
これは当時の東映動画の劇場用アニメが売れなくなってきた世相を反映するものなのでしょう。スタッフの想いとしては
・アニメ映画は観客の入場料で作っているのだから観客第一に考えている
→TVアニメはしょせんスポンサー第一で作られている。いいところでCMが入るし、スポンサーに都合がいいことしかやらない
だから、子供たちよ。テレビアニメばかりみてないで映画館にきておくれ
かなり切ないですね。事実、本作の時点で東映動画は劇場用長編ではなく中編にして制作費をケチり、東映マンガまつりの中の一作として上映しないと採算とれないくらいに劇場用アニメが衰退していたのです。結局、この映画を作ったスタッフのほとんどはその後テレビアニメを作ることになります(含 宮崎駿)。
で話を戻すと、悪玉の象徴とされた洗脳動画 BOAジュースの5秒CMが印象的。「♪ゴッコリゴッリンコのBOAジュース(じゃん)」という劇中CMソングは耳に残ります。
→昭和40年代のTVCMには5秒モノが結構あって、5秒CMを3連発流していたりしたもので、ひたすら人の目と耳を惹きつけることに特化した麻薬的作品が多かったのです。たとえば植木等の「アイデアル 傘である」とか
このBOAジュースは恐ろしい飲み物。1000本飲んで王冠1000個集めたら海底旅行にご招待ってキャンペーンやってるのですが、常飲していると1000本飲む前に身体が溶けて泡になってしまうという超化学毒物兵器! これをテレビでバンバン宣伝して売りまくるんだから、まさにTV局は悪の巣窟。ものすごい陰謀論です。
当時の映画業界人はよっぽどテレビ局が憎かったんでしょうね。でも今のテレビ業界がゲームとかネットをネガティブキャンペーンするのに何か似ている気もします。少年犯罪はゲームやネットをしすぎたために生じたなんて、まさに陰謀論。
つまり映画がテレビに食われていったように、テレビはゲーム・ネットに食われていくということなのでしょうか?
…歴史は繰り返す。