宇宙でいちばんあかるい屋根を観ました。小説の映画化らしいのですが原作は読んでいません。清原果耶と桃井かおりの演技がすごいと評判になっています。
たしかに二人の演技は素晴らしく彼女らの芝居で映画が成立していると言えるでしょう。でもそれ以外の演出とか脚本には疑問点だらけなのです。
そもそも、設定における人物像と演出意図がズレ過ぎています
主人公のつばめは、近所に住むチャラい大学生に色目を使う女子中学生。当然ながら相手にされない。趣味にも精力的で放課後に書道とか水墨画のカルチャー教室に通う。同じ学校の男子とつきあったこともあるし(すぐ別れたけど)、かなりリア充なキラキラ女子って設定だと思う。しかも学校シーンで高校受験の気配もないしモトカレが中学生なのに退学になるあたり、通っているのは私学の中高一貫校ですよね。2005年という年代設定から推察するに、小悪魔agehaを愛読してちょっと私服ファッションにも取り入れちゃう、地方ではちょっと目立つキラキラ女子あたりって人物像を思い浮かべるわけです。
それなのに清原果耶演じるつばめは、公立高校にいそうな奥手な女子高校生なんですよね。とてもいいとこの私学に通ってるキラキラ女子中学生には見えない。だいたい、あんな奥手キャラなら「あの娘はビッチ」なんて落書きされるわけないのですよ。キラキラしてて社交的な女子にこそ効く中傷なわけで、おどおど奥手な地味キャラには効かないでしょう。小悪魔agehaの小すらない。
しかも学校シーンは予算かけているのに不自然な感じが強い。部活動の匂いがないんですね。特に運動部の匂いがしない。夏なら夏合宿だろ?
そもそも、水墨画がテーマの一つの話なんだから、原作がひと夏で終わるとしてもうまく改変して冬のシーンは出すべきでしょう。水墨画に雪景色は欠かせないわけで、夏の映像しかないものだから、ラストの絵は水墨画もどきの謎のカラー塗絵になってしまっている。
原作未読なので原作も同じように変な可能性もありますが、おそらく行間を読ませる叙述でうまく表現してると思うのですね。読み取って脚本に替える脚本家と演出家の腕の問題としか思えない。ファンタジーなんだから細かい不整合なんかきにしてはいけないのかもしれないけど、あまりにもひどい不整合です。
しかし、運が良いことに桃井かおりと清原果耶が巧いものだから力業でなんかいい映画に仕上がっちゃっているのです。そこがすごい。キャストですべて解決という日本映画らしい映画なのです。