トランセンデンス
トランセンデンスを観ました。
コンピュータ網に人間の人格を移すことで神が生まれた! みたいな話です。
基本的なストーリーは昔からあるデストピア物のSFそのものです。それに宗教臭さを加味した感じ。
ハリウッド映画にありがちな全米と全世界の区別がないようなもやもやした世界観で、人格を量子コンピュータとネットワーク網に移して神になったはずのウィルもアメリカの田舎町一つだけに拠点を作る矛盾。ふつーに考えればアメリカ国外にも複数の拠点を作るよね。太陽電池が重要っぽいので、24時間どこかは昼って感じで拠点網を作るのが正しい戦略でしょう。北半球と南半球の両方にあれば四季の違いもカバーできるしね。
拠点一つだから軍隊に襲われちゃうのよ。まぁ、米国内で米陸軍が戦争仕掛けちゃうとかもうリアリティのかけらもないので、センス・オブ・ワンダー成分が皆無のおとぎ話でSFとしては出来が悪いです。まだね、不具を治療してもらうために集結してきたいわば信者達が町の議員・町長・町の警察消防を牛耳ってみたいな寄生獣の後半みたいな、民主制を活用して古い人類から権力を奪っていくような流れの方がリアリティあったはず。
本作ではそのような民主制度の仕組みを含む政治の視点はのぞき、テクノロジーとスピリチュアルな素朴な宗教観との絡みだけに焦点を合わせているような思えます。
最後に人類は大きな犠牲を払い、神となったウィルを止めるのですが、神は死んだわけではなく鎮まっただけ。
また電力が戻ればすぐに復活、しかも今度はイヴリンという女神も同時に復活しそうな雰囲気で、むしろ状態は悪くなってます。
このまま電力と計算機の文明を忌避して暗黒時代を生きていくのか、それとも新しい神々を受容していくのか、未来の人類の選択はどうなるのか考えさせられます。
通信技術も停滞して世界は一枚岩ではなくなるので、たかだか10年もかからずに、どこかの辺境の国が電力を復活してあっというまに神々が復活する気もしますね。
大作というほど対策でない気がしますが、ジョニーデップのスカした顔の演技が面白かった作品です。