マイマイ新子と千年の魔法
マイマイ新子と千年の魔法を観ました。高樹のぶ子の小説が原作のアニメ映画です。
昭和30年の防府の国衙跡に住む小学生たちの生活を生き生きと描いた作品。
淡々と進むストーリーはお子様にはちょっと退屈かも。宣伝やポスターではまるで子供向けのような本作ですが、実は三丁目の夕日的な老人向けのノスタルジー作品です。三丁目の夕日では楽園のようなノスタルジー世界でしたが、本作ではリアルにまだまだ不穏な空気が残る昭和30年代を子供の視点だけで描写するというかなり難易度の高いことをやっています。
ほのぼのとした子供の生活の描写の陰で、学校の先生は不倫してたり、真面目そうな警官は賭博にはまってたり、大人の黒い生活がチラホラと見えます。最後に主人公の祖父が亡くなって主人公一家が引っ越していくんだけど、これも家計の主要部分は祖父の恩給・年金で賄われていたんだって大人の事情が見えてしまうあたりが渋い。
こういう世知辛い世相表現をストレートに出さず、子供の視点の風俗描写でキチンと伝えられているのが本作のすごいところです。もちろん観客がそれなりに人生経験がなくてはならないわけで、これこそが本作は老人向け映画であるとする所以です。
主人公とその親友の妄想である1000年前の防府の清少納言のシーンもなかなか面白いです、妄想好きな少女というと赤毛のアンみたいなウザい女になってしまう可能性がありますが、新子はアンみたいに押し付けがましくなく、内輪でだけ空想を楽しむタイプなので大丈夫でした。
時代考証をきっちりやった描写と淡々とした脚本が最近では珍しい異色作です。
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