地球が静止する日
地球が静止する日を観ました。原題は"THE DAY THE EARTH STOOD STILL"です。ほぼ直訳。1951年に制作されたオリジナル版のリメイクです。1951年版の原題は同一ですが、邦題はちょっと変化してて「地球の静止する日」です。なぜかリメイク版は地球の〜ではなくて地球が〜。ジャイアントロボにひきずられているのか? それとも50年経って日本語が変化したのか?
テーマ、メッセージ、そしてSFとしての格はオリジナル版と変わりません。ただし、舞台を冷戦終了後の現代にうつし、SF考証も今風になっています。主人公の異星人クラトゥが地球人と同じ姿かたちをしている理由もきれいに説明されますし、くわえて護衛ロボットのゴートがかなりSFギミック的にかっこいいです。かなり月光蝶っぽい。
降下ポイントがオリジナルではワシントンDCだったのに、本作ではニューヨークになっていたのは国連本部があるからなのでしょう。だからといって国連にまかせたりせず、アメリカが独裁的に処理しようとするあたりはオリジナルのままであり、アメリカって国は1951年から変わっていないのかもしれません。
以下はネタバレ談義
タイトルにある地球停止とは全世界的停電のことなのですが、オリジナル版と本作では発動するタイミングがだいぶ違います。オチがあいまいなところは変わらずなので、映画が終わった後の世界がどうなったかは観客の想像力に任されます。
本作での停電現象は飛行機だけ例外ということはなさそうなので、エアフォースワンに乗ってるであろう合衆国大統領は墜落死したことは想像に難くありません。徹底的に破壊されたのはアメリカ本土だけだし、実はクラトゥの文明は地球の突出した超大国を弱体化するという高度に政治的な介入をしただけなのかもしれないですね。
食物連鎖の頂点としての人類を完全に滅ぼしてしまうと逆に生態系を損なってしまいそうです。アメリカのロッキー山脈の狼は人間の駆除活動によって絶滅寸前までいったのですが、そのために生態系が崩れてカリブーなどが増えすぎてしまったそうです。そこでカナダから狼を連れてくるなどの保護施策を行って生態系を維持しようとしているとのこと。クラトゥ達も同じように人間の個体数を制御しようとしているのかも?
オリジナル作の良さを損なわずに、巧妙かつ大胆に現代風アレンジを断行した傑作です。