イントゥ・ザ・ワイルド
イントゥ・ザ・ワイルドを観ました。実話を元にした映画です。
頭脳優秀かつ経済的にも恵まれた若者が、いきなり蒸発して無銭旅行に出てしまう話。出発前にすべての貯金はチャリティに寄付し手持ちの小額紙幣も燃やしてしまう徹底ぶりに若者特有の潔癖さが描かれています。
アメリカ各地の雄大な自然がとても美しい反面、ストーリーはかなり重いです。1990年代を舞台としているのですが、まだアメリカにはヒッピー文化の残滓があったんですね。さすがに21世紀の今は老人ばかりでつらいんだろうなぁ。
本作には表面的には宗教的な話はほとんどでてきませんが、バックボーンにはキリスト教の価値観・倫理観が深く横たわっているように思えます。
主人公は自分の母親が正妻ではなく愛人であることに深く傷ついています。東アジア人には別にどうでもいいじゃんって感じられます、自分のせいじゃないわけだし。しかし、キリスト教倫理観ではこれは大罪なんでしょう。
作中で、ひとりの老ヒッピーが主人公に「おまえはイエスか?」って問う場面がありますが、イエス本人も不義の子(マリアの子イエスという呼び名そのものがマリアの私生児であることを示す蔑称)であることにかけてあるものと思われます。
ロードムービー的に美しい自然の風景を観るのが楽しい映画。また、厳格で禁欲的な価値観を押し付けた結果の悲劇という見方もできる作品です。